「農家の時給は10円」は本当か?農家の視点から考える、日本の農業の厳しい現実

こんにちは。「那須の田んぼ日記」の管理人です。 今回は【農業ニュースと考察】として、最近気になるニュースを取り上げてみたいと思います。

目次

「農家時給10円」報道 きっかけと概要

皆さんは「農家の時給は10円」という言葉を耳にしたことがありますか?

少し前にテレビ番組やネットニュースで取り上げられ、SNSなどでも話題になったようです。時給10円? さすがに何かの間違いでは? と思ってしまいます。コンビニのアルバイトでも時給1000円を超えるのが当たり前の時代に、私たちの食を支える農家さんの時給がそんなに低いなんて、信じがたい話です。

でも、もしこれが現実の一部を表しているとしたら?

今回は、この衝撃的な言葉の背景を探りながら、ここ那須塩原で米作りをしている農家の両親の状況にも少し触れつつ、日本の農業が置かれている厳しい現実について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

「時給10円」報道の背景にある複数の要因

まず、この「時給10円」という数字はどこから出てきたのでしょうか?

情報源の一つは、今年(2025年)2月頃に放送された民教協(民間放送教育協会)のドキュメンタリー番組『時給10円という現実 ~消えゆく農民~』のようです。番組では、山形県の米農家の方の例として、「2022年の米農家1経営体あたりの所得(補助金含む収入から経営費を引いた額)を平均労働時間で割ると、時給換算で10円になる」という試算が紹介されたとのこと。

また、3月末には、農家さんたちがトラクターで都心を行進する「令和の百姓一揆」というデモ活動があり、そこでも農家の厳しい経営状況を訴える象徴的な言葉として使われ、ニュースになりました。

もちろん、これは特定の条件下での試算であり、全ての農家さん、全ての作物に当てはまるわけではありません。 農業経営の形は多様ですし、作目や規模、地域によって状況は大きく異なります。

しかし、それでもこの「時給10円」という言葉が注目を集めたのは、多くの農家さんが「労働に見合った収入を得られていない」という厳しい現実を実感しているからではないでしょうか。

では、なぜそのような状況が生まれているのでしょう? 主な要因として、以下のような点が指摘されています。

  • コストの高騰: 肥料、農薬、燃料、農業機械など、生産に必要なものの値段が軒並み上がっています。しかし、その上昇分を農産物の販売価格に上乗せするのは難しいのが現状です。
  • 低い販売価格: スーパーに行けば、安い海外産の農産物もたくさん並んでいます。価格競争の中で、国内の農産物価格はなかなか上がりにくい構造があります。
  • 気候変動のリスク: 近年の異常な猛暑や集中豪雨、台風などは、農作物に直接的なダメージを与えます。不作になれば収入は激減し、経営を直撃します。
  • 後継者不足と高齢化: 農業を担う人が減り、高齢化が進んでいます。耕作放棄地が増え、地域全体の生産力が低下することも懸念されています。

これらの要因が複合的に絡み合い、昨今のお米の価格高騰や品薄感に繋がっていると考えられます。

最近の米価の状況や、政府による備蓄米放出の影響などについて、より詳しくは以下の記事で考察しています。

我が家の農業の現状

さて、視点をここ那須塩原、私の実家の農業に移してみましょう。 私の両親は、祖父母が長年守ってきた田んぼを受け継ぎ、それぞれの本業を引退した後から、本格的に米作りに取り組んでいます。

二人で協力しながら、祖父母の代から続く田んぼを守り、種まきから稲刈りまで、年間を通して多くの手間と時間をかけています。その姿を見ていると、やはり農業経営の現実は厳しいものだと感じずにはいられません。

「昔と違って、肥料も燃料も、何もかも高くて大変だ」「年々、夏の暑さが厳しくなって、米の品質管理に本当に気を使うよ」 我が家でそんな会話を聞くことは珍しくありません。特に米作りは作業工程が多く、田んぼを管理するための機械の維持費や燃料代も大きな負担になっているようです。

会社勤めなどを終え、いわば第二の人生として夫婦で農業に専念しているわけですが、それでも資材の高騰や米価の変動、毎年のように気をもむ天候不順といったリスクは常に隣り合わせです。

「手間ばかりかかって、これじゃ儲けは少ない」 そんな言葉を聞くと、「時給10円」という話も、決して大げさな話ではなく、日本の多くの農家さんが直面している現実なのだと、改めて考えさせられます。長年の経験を持つ両親でさえそうなのですから、新規に農業を始める方にとっては、さらに厳しい状況なのかもしれません。

私たちの食と農業の未来のために

この「時給10円」問題は、決して農家さんだけの問題ではありません。 日本の食料自給率は低く、多くを輸入に頼っています。国内の農業が衰退すれば、私たちの食卓はますます海外の情勢に左右されることになります。また、農業は食料生産だけでなく、国土の保全や地域社会の維持といった多面的な役割も担っています。

この厳しい状況の中で、農家さんたちもただ手をこまねいているわけではありません。生産コストを抑える工夫をしたり、品質の高いものを作って付加価値をつけたり、インターネットで直接販売したり、観光農園を始めたりと、様々な努力や挑戦を続けています。

では、消費者である私たちには何ができるでしょうか?

すぐにできることは少ないかもしれませんが、例えば、

  • 食べ物の値段の「安さ」の裏側には、生産者の苦労があるかもしれない、と想像してみること。
  • 少し高くても、地元で作られた新鮮な野菜やお米を選んでみること(地産地消)。
  • 生産者の顔が見える直売所などを利用してみること。
  • そして、日本の農業が置かれている現状に関心を持つこと。

こうした小さな意識の変化が、回り回って生産者を応援することにつながるかもしれません。

もちろん、個人の努力だけでは限界があります。社会全体として、そして行政として、持続可能な農業をどう支えていくか、真剣に考える必要があります。農家への所得補償のあり方、スマート農業など新技術導入の支援、環境に配慮した農業への移行サポートなど、様々な議論が必要です。

未来へつなぐ農業を応援したい

今回は、「農家の時給10円」という衝撃的なニュースをきっかけに、日本の農業が抱える厳しい現実について考えてみました。

確かに、農業を取り巻く環境は厳しいです。しかし、それでも日々汗を流し、私たちの「食」を支えてくれている農家さんが全国に、そしてこの那須塩原にもたくさんいます。

この「那須の田んぼ日記」を通じて、農業のリアルな姿、大変さも、そしてやりがいや面白さも、少しでもお伝えしていけたらと思っています。

皆さんも、今日の食事がどこから来たのか、誰が作ってくれたのか、ほんの少し思いを馳せてみていただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考記事
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次