こんにちは、那須田んぼ管理人です。
最近、「お米の値段が上がった」「スーパーでお米が見当たらない時がある」なんて話を耳にしませんか? 「令和の米騒動」なんて言葉も聞かれるほど、私たちの主食であるお米の状況が少し騒がしくなっています。
でも、一体なぜそんなことが起きているのでしょう? 今回は、農業に詳しくない方にも分かりやすいように、最近のお米ニュースの背景を紐解きながら、私たちの食卓と、それを支える農家の今について、私自身の視点も交えながら考えてみたいと思います。
この記事は農業の専門家が書いた分析レポートではありません。 栃木県那須塩原市で米農家を営む両親を持つ、農業未経験の私(管理人)が、日々見聞きする両親や周りの農家さんの話、そして公開されているニュースなどの情報をもとに、「最近のお米事情って、どうなっているんだろう?」と自分なりに調べて考えたことをまとめたものです。専門的な視点とは異なりますが、同じように「最近のお米、どうなってるの?」と感じている方に、少しでも分かりやすく現状を整理し、私なりの視点も交えながら、この問題について一緒に考えるきっかけになれば幸いです。
最近よく聞く「お米のニュース」の背景
2024年は記録的な猛暑でした。実はこの暑さが、お米の品質に大きな影響を与えたようです。お米が実る大切な時期に高温にさらされると、お米が白く濁ったり、ひび割れたりすることが増え、見た目以上に、私たちが普段食べているお米(白米)として出荷できる量が減ってしまった、という状況がありました。報道によると、カメムシの被害が増えたことも品質低下の一因とされています。
収穫量自体は平年並みだったとしても、こうした後処理の段階で量が減ることで、「実質的なお米不足」感に繋がった面があるようです。
さらに、新型コロナが落ち着き、外食需要が回復したり、インバウンドで海外からの観光客が増えたりしたことも、業務用のお米の需要を押し上げました。
価格高騰・品薄の背景と考えられる要因
猛暑による品質低下や需要増だけでなく、他にもいくつかの要因が重なっていると言われています。
流通の変化?「行方不明米」問題
昔はお米の多くが農協(JA)を通して流通していましたが、最近は農家さんが直接、卸売業者や私たち消費者に販売するルートも増えています。この流通の多様化自体は悪いことではないはずですが、結果として市場全体のお米の動きが捉えにくくなり、「どこにどれだけお米があるのか分からない」状態が生じ、一部での品薄感や価格変動に繋がっている可能性も指摘されています。
そもそも生産量がギリギリだった?「減反政策」の影響
日本の稲作は、長年にわたり「減反政策」という、お米を作りすぎないように国が生産量を調整する政策下にありました。お米の消費量が減る中で価格を維持するためだったのですが、その結果、日本の稲作の生産基盤そのものが、ギリギリのバランスになっていたのかもしれません。そのため、猛暑による品質低下や、急な需要増といった少しの変化で、需給バランスが崩れて価格が大きく動きやすくなっていた、とも考えられます。
世の中全体の物価上昇
これはお米に限りませんが、肥料や燃料、農業機械といった生産コストの上昇、人手不足による人件費アップなど、物価高騰の流れも当然、お米の価格に影響を与えています。
「備蓄米」放出の効果と限界
こうした状況を受け、政府は緊急措置として、万が一のために国が備蓄していたお米(備蓄米)を市場に放出しました。合計で21万トンという量で、価格安定への期待もありました。
しかし、ニュースでも報じられているように、備蓄米がスーパーに並び始めても、多くの消費者が感じるお米の価格は、なかなか下がりませんでした。理由としては、放出された量が日本の年間消費量(約700万トン)から見ると一部(約3%)であったこと、備蓄米自体の取引価格も決して安くはなかったこと、そして全てのお店に十分に行き渡らなかったことなどが挙げられています。価格の急騰を抑える一定の効果はあったのかもしれませんが、根本的な不足感の解消には至らなかったようです。
私の視点から見る農家の現状と構造的課題
今回のお米のニュースは、消費者として価格に目が行きがちですが、一方で、お米を作っている農家さんが今どんな状況にあるのか、改めて考える機会にもなりました。
実は安すぎたこれまでのお米の値段
私たち消費者は「お米が高い!」と感じていますが、実は、ここ何十年もの間、お米の価格は非常に安く、農家さんにとっては経営的にかなり厳しい状況が続いていたと言われます。生産コストの方が販売価格より高く、我が家も含め赤字覚悟で作っていた農家さんも少なくなかったようです。以前の記事で触れた「「農家の時給は10円」は本当か?農家の視点から考える、日本の農業の厳しい現実」も、こうした背景があります。
そのため、現在の価格上昇に対しては、「やっと少しは適正な値段に近づいた」「これまでの値段が安すぎた」と感じている農家さんもいる、という声も報道されています。
担い手不足という大きな課題
より深刻なのは、お米作りを担う人が減り続けていることです。農家さんの高齢化は進み(平均年齢は約70歳とも)、後継者不足は待ったなしの状態です。このままでは、美味しい日本のお米を作り続けること自体が難しくなる、という現実に直面しています。最近では、米価が上がっている状況でも、むしろ米作りをやめる農家さんの数が過去最多になるかもしれない、といった報道さえありました。
未来に向けた動き
もちろん、ただ厳しいだけではありません。コスト上昇や価格変動の中でも、農家さんたちは新しい挑戦を続けています。JAを通さず消費者に直接販売する販路を開拓したり、気候変動に強い新しい品種を導入したり、IT技術を活用して作業効率を上げたり。
ただ、こうした努力が実を結ぶためには、やはり若い世代が「農業で生計を立てられる」「農業をやってみたい」と思えるような、安定した経営環境が不可欠だと感じます。
お米問題から見える日本の農業課題
今回のお米をめぐる一連の動きは、単なる価格変動の問題ではなく、日本の農業が抱える様々な課題、気候変動への適応、長年の政策の影響、流通の変化、そして深刻な担い手不足が複雑に絡み合い、表面化した結果と言えるのかもしれません。
私たちが毎日当たり前のように食べている一杯のご飯。その裏側には、農家さんの大変な努力と工夫、そして日本の農業が直面する厳しい現実があります。このニュースをきっかけに、お米の値段だけでなく、私たちの食を支える農業の今と未来について、少し思いを巡らせてみるのはいかがでしょうか。


コメント